蓮田囃子保存会を発足して、お囃子をやっているうちに、篠笛を自分で作ってみたいと思いはじめました。
そこで今回は、篠笛を作成する覚書などを含めて書いて行きたいと思います。
篠笛を自作する方法を考える
篠笛さくせいは、ネットで沢山あるので、情報は色々と入手できます。
自分にあった方法なども試しながら、やっていきたいと思います。
篠竹は、採取して最低3年は乾燥させるという事なので気長にやっていきましょう。
篠笛を作成する際の工具類
- ノコギリ
- 丸のこ(卓上丸のこ)
- 旋盤
- キリ(ドリル)
- 切り出しナイフ
- 彫刻刀など
- 棒ヤスリ
- 紙やすり
- 丸棒
- 定規
- 矯めし棒
- ガスバーナー
- 七輪
- 漆
- 鉛筆
篠竹を採取する
竹藪を探すのは意外と大変で、特に篠竹の場合はさらに難しいです。探すのは、ある程度太さがあって、かつ一年以上経過している節の長い竹です。若い竹は採取しても乾燥すると無残な状態になるため、避けて採取するようにします。
竹藪の状態によっては、放置していると枯れた竹が多かったり、病気が蔓延していたりする場合があります。そんな場合は、枯れ途中の黄色い篠竹なども採取の候補になります。
篠竹を切る際は竹挽(たけびき)が便利
篠笛づくりでは、最初に竹を必要な長さに切り出す工程があります。ここで役立つのが「竹挽」と呼ばれる専用の鋸(のこぎり)です。
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竹挽の特徴
通常の木工用鋸に比べ、竹の繊維をつぶさずに切れる細かい刃がついており、切り口が美しく仕上がります。竹は繊維が縦に通っているため、普通の鋸を使うと割れや毛羽立ちが起きやすいのですが、竹挽ならそうしたトラブルを防げます。 -
仕上がりの違い
切り口がきれいに仕上がることで、その後の節処理や内径削りがスムーズになります。毛羽立ちが少ないため音の通りも良くなり、最終的な音質にも影響します。 -
安全性の面
専用の刃はスムーズに食い込むため、力任せに引く必要がなく、竹を割ってしまうリスクも減ります。
つまり、竹挽を使うことで 効率よく、美しく、安全に竹を切り出すことができる のです。
篠竹を切断する
採取した篠竹は、一節ごとに切断をしていきます。
篠竹の切断の基本
篠笛を作る際には、まず必要な長さに竹を切り出します。切断は単に寸法を整えるだけでなく、その後の音の響きや仕上がりに直結する大切な工程です。
工房や作業場での加工なら、卓上丸鋸(スライド丸鋸など) を使用すると効率的で正確な切断が可能です。
もちろん、竹挽で切断も問題ありません。
篠竹の切断の注意点
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刃の選択
竹は繊維が硬く、普通の木材よりも割れやすいため、細かい刃のチップソーを使うと仕上がりがきれいです。 -
切断速度
一気に押し切ると竹が割れることがあるので、刃をゆっくり下ろしながら切るのがコツです。 -
端面処理
切断後は切り口にバリが残ることがあるため、ヤスリやサンドペーパーで軽く整えておきます。
特殊な仕上げ ― 朗童管のように管頭を抜かずに仕上げる
篠笛の中には、朗童管(ろうどうかん) のように「管頭を抜かず、竹本来の形を残して仕上げる」ものもあります。
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切断位置の工夫
管頭を活かす場合は、管頭の長さを基準に逆算して寸法をとり、丸鋸で正確に切り出します。 -
美観と響き
管頭の切り口の精度が見た目に直結するため、特に丁寧な切断と端面仕上げが求められます。
卓上丸鋸の利点
工房や自宅で篠笛用に竹を加工する際は、卓上丸鋸(スライド丸鋸など) が非常に便利です。
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切断面が直角に揃う
卓上丸鋸は角度を正確に保ったまま切断できるため、切り口がきれいでまっすぐに仕上がります。これは後の仕上げや音程調整にも有利です。 -
スピードと効率
何本もの竹を同じ寸法で切り揃える際、手鋸に比べて短時間で均一に加工できます。 -
安全性(固定できる)
材料を押さえるクランプ機構があるため、竹が転がって事故につながるリスクを減らせます。 -
一定寸法の量産
笛を複数本作る場合、ストッパーを使って同じ長さに揃えられるのも利点です。
現場での切り出しには竹挽が便利
一方で、竹林や現地で竹を切り出す場面では 竹挽(竹専用鋸) が活躍します。
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持ち運びやすい
軽量で扱いやすく、竹林での作業に適しています。 -
竹に特化した刃
繊維に沿ってスムーズに切れるため、割れや毛羽立ちを防ぎ、美しい切り口になります。 -
細かい位置調整
節の配置を見ながら「ここで切りたい」というところに正確に合わせやすいのも竹挽の強みです。
まとめ
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工房での精度重視・効率作業 → 卓上丸鋸
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竹林での現場作業・柔軟な切り出し → 竹挽
両方を使い分けることで、篠笛づくりの切断工程は格段にスムーズになります。
篠竹の節を抜く
防虫や乾燥を早めるために節を抜いていきます。
乾燥を促す効果
竹は伐採した直後は水分を多く含んでおり、そのままでは割れやカビの原因になります。節が残っていると内部に湿気がこもりやすく、乾燥が不均一になります。
節を抜いておくことで、管内の空気が通りやすくなり、
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乾燥が早く進む
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内外の水分差が小さくなる
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割れを防止しやすい
といった利点があります。
虫食い防止の効果
竹は油分や糖分を含むため、虫が食い入ることがあります。特に密閉された節の中は湿度が高く、虫にとって格好の環境になりがちです。
節を抜くことで通気性が良くなり、虫が住みつきにくい環境となります。また、乾燥が進むことで竹自体も硬化し、虫にかじられにくくなります。
まとめ
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節抜きは音のためだけでなく、竹を守るための工程
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乾燥を均一にし、割れやカビを防ぐ
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虫食いを防ぎ、長期保存に有効
こうした理由から、笛作りにおいて節抜きは欠かせない基本作業となっています。
篠竹を洗う
篠竹を洗う目的
篠笛に使う竹は、切り出した直後は 土や埃、油分、カビの胞子など が付着しています。これをそのまま乾燥させてしまうと、表面に汚れやシミが残ったり、虫食いやカビの原因となったりします。
そのため、切り出した段階で一度きれいに洗っておくことが大切です。
洗う方法
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水洗い
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竹を水で濡らし、柔らかい布やタワシで表皮を軽くこすります。
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泥や埃をしっかり落とすのがポイントです。
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油分の除去
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竹の表皮には自然な油分(竹ヤニ)があり、時間とともにベタついたりカビの温床になることがあります。
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節や割れ目の掃除
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汚れが溜まりやすい節の周辺は、歯ブラシや細い棒に布を巻きつけて掃除すると効果的です。
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洗うときの注意点
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水に浸けすぎない
長時間水に漬けると竹が水分を吸いすぎ、割れやすくなるので注意します。 -
柔らかく擦る
表皮を傷つけると乾燥後の艶が失われるため、金属ブラシなど硬いもので擦らないようにします。 -
洗った後はしっかり乾燥
水気が残るとカビの原因になるため、天日干し乾燥させます。
篠笛づくりにおける意味
篠竹を洗うことで、
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清潔に保てる
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表皮が美しく仕上がる
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乾燥が均一に進む
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虫やカビを防げる
といった効果があり、長持ちする笛づくりの第一歩になります。
篠竹を乾燥させる
油抜きや矯め直し(矯正)は、乾燥させてからやる方もいるようです。
篠竹は、天日干しで乾燥させていきます。
乾燥させる場合は、逆さまにして干すのが良いようです。
(竹は根から水分を吸い上げる為のようです。)
乾燥の重要性
篠竹は切り出した直後は水分を多く含んでおり、そのまま加工すると
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割れやすい
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音が安定しない
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虫やカビが発生しやすい
といった問題が起こります。
そのため、十分に乾燥させてから加工に入る ことが篠笛づくりの基本です。
乾燥の方法
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天日干し(自然乾燥)
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竹を日陰の風通しの良い場所に立てかけて乾燥させます。
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直射日光に当てると急激に乾燥して割れの原因になるため、日陰干しが推奨されます。
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数ヶ月から数年かけてじっくり乾かすのが理想です。
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油抜き乾燥
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篠竹を軽く火であぶり、内部の水分と油分を抜く方法です。
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竹の色艶が増し、カビ防止や耐久性の向上にもつながります。
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油抜き後は、再び日陰で乾燥させて安定させます。
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室内乾燥
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雨の日や湿気の多い季節は、室内の風通しの良い場所に吊るして乾燥します。
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除湿機や送風機を使うと効率的ですが、急激に乾かすのは避けます。
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乾燥の期間
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短期(8~12か月程度)
体験用や練習用の笛ならこの期間でも加工可能。 -
長期(1~3年程度)
本格的な篠笛づくりでは、数年単位で乾燥させた竹が好まれます。しっかり乾燥した竹は割れにくく、音色も安定します。
乾燥中の注意点
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直射日光を避ける:ひび割れの大きな原因になります。
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湿気を避ける:カビや虫食いを防ぐため、風通しを確保。
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定期的に点検する:割れや変色がないか確認しながら保管します。
まとめ
篠竹の乾燥は、ただ水分を飛ばすだけでなく、音色・耐久性・見た目を決める重要な工程 です。
手間と時間をかけてしっかり乾燥させることで、長く愛用できる篠笛が生まれます。
篠竹の油抜きをする
油抜きをすることで、耐久性の向上や竹の表皮の汚れ落とし艶出しの効果が得られます。
模様なども、キレイに現れる場合もあると思います。
油抜きをする際に、竹瀝(ちくれき)という油分が吹き出してきます。
この油分をウエスで拭き取って、竹を磨きます。
油抜きの意味
篠竹の内部には「竹ヤニ」と呼ばれる油分が多く含まれています。これを抜かずに放置すると、
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表面にベタつきが残る
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カビや虫食いの原因になる
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音の響きが不安定になる
といった問題が出てきます。
そのため、油抜きは竹を強く美しく仕上げるための必須工程 です。
乾式油抜き(火抜き)
火の熱で竹の油分を抜く方法です。
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方法
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ガスバーナーや炭火で竹を軽くあぶる。
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表面がうっすらと艶を帯び、油分が浮いてきたら布で拭き取る。
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均一に熱を加えるため、竹を回しながら作業するのがポイント。
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特徴
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短時間で効果が出る。
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表面に美しい飴色の艶が生まれる。
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油分をしっかり抜くことで竹が引き締まり、耐久性が向上する。
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注意点
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熱しすぎると焦げや割れの原因になる。
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節や薄い部分は特に慎重に。
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湿式油抜き(湯抜き)
熱湯を使って竹の油分を抜く方法です。
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方法
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大きな鍋や桶に湯を沸かし、竹を浸す。
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数分〜十数分ほど熱湯に通し、表面に浮き出た油分を布で拭き取る。
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湯から上げた後は陰干しでしっかり乾燥させる。
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特徴
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火を使わないため、焦がすリスクがない。
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竹全体を均一に処理しやすい。
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湯気と熱で内部までじんわり油が抜ける。
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注意点
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長時間煮過ぎると竹が柔らかくなり、変形する恐れがある。
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すぐに水気を拭き取り、乾燥工程に移さないとカビが出やすい。
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まとめ
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火抜き:短時間で艶を出せる、職人仕事に近い方法。
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湯抜き:焦がさずに均一処理できる、安全性の高い方法。
どちらの方法も、油分を抜くことで竹が引き締まり、音色が安定し、虫やカビに強い篠笛の素材 が得られます。
篠竹の矯め直し (矯正)
矯め直しは、熱を利用して竹の曲がりを一本一本矯正します。
竹は真っ直ぐではないので、一本一本を矯正作業していきます。
矯め直しとは
篠竹は自然のものなので、まっすぐに見えてもわずかに曲がりやねじれがあります。
この曲がりを直し、息の通り道をまっすぐに整える作業 を「矯め直し(ためなおし)」といいます。
矯め直しを行うことで、見た目の美しさだけでなく、音の安定性や吹きやすさ も向上します。
矯め直しの方法
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加熱して柔らかくする
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ガスバーナーやアルコールランプの火で竹を軽くあぶり、熱で柔らかくします。
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全体を均一に温めるより、曲がっている部分を重点的に加熱します。
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力を加えて矯める
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手でゆっくりと曲がりを反対方向に押し、まっすぐに矯正します。
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強引に曲げると割れてしまうため、じわじわと時間をかけるのがコツです。
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冷まして形を固定する
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加熱した部分が冷めると、その形で固まります。
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竹の内部に「記憶」が残るため、まっすぐな状態が維持されます。
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注意点
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焦がさない
熱を当てすぎると表面が焦げて強度が落ちます。火加減には細心の注意を。 -
一度で無理に直さない
大きな曲がりは一気に直そうとせず、数回に分けて少しずつ矯めます。 -
仕上げの確認
光にかざして通しを見ると、内径の直線性が確認しやすいです。
矯め直しの意味
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外観が整い、仕上がりが美しくなる
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息の通りがスムーズになり、音が安定する
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長期間の使用でも反りや歪みが出にくくなる
篠竹材料選び
竹の選定
篠笛には「女竹(めだけ)」や「真竹」がよく使われます。肉厚でまっすぐ、節の間隔が適度な竹を選ぶことが重要です。
篠竹の下ごしらえ
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節の処理
内側の節を削り取り、息の通りを滑らかにします。 -
外皮の整え
表面の油分や汚れを取り除き、磨いておくことで後の工程がスムーズになります。
篠竹の基本形の加工
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竹を切り出す
尺(長さ)を決め、篠笛の種類(六本調子、八本調子など)に合わせて切ります。 -
内径の調整
竹の内側を均一に削り、音の響きを整えます。
篠竹に穴を空ける
篠竹におおよその穴を空ける。
吹き口(歌口)の加工
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位置決め
吹き口の位置を決め、竹の上部に穴を開けます。 -
形の仕上げ
唇が当たる部分を少し斜めに削り、吹きやすさを調整します。
指穴(音孔)の配置と加工
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音律の設計
調子に合わせて指穴の位置を決定。半音を出す工夫や、地域流儀による違いもあります。 -
穴あけ
錐や電動工具を用いて穴を開けます。 -
調整削り
少しずつ削り広げ、実際に吹いて音程を確認しながら微調整します。
篠竹の管内の調整(そうじ)
借りで塞ぐ調律の工夫
篠竹の管内の調整を行います。
篠笛の管頭を蜜蝋で塞ぐ
蜜蝋で管頭を塞ぎます。
蜜蝋で塞ぐ意味
篠笛の調律や仕上げの段階で、管頭(吹き口側の開口部)を蜜蝋で部分的に塞ぐ方法があります。
これは古くから行われてきた工夫で、以下のような効果があります。
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音程の調整:蜜蝋で空気の通り道を狭めることで音程を下げられる。
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響きの安定:余分な振動を抑え、音のまとまりが良くなる。
- 篠竹に負担をかけずに、栓をすることができる。
蜜蝋の特性
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柔らかい:熱を加えて柔らかくできるため、形を自在に整えられる。
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粘着性がある:竹の表面にしっかり密着し、ずれにくい。
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取り外し可能:必要に応じて取り外せるので、試行錯誤しながら調整ができる。
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天然素材:竹や笛に害がなく、古くから和楽器の調整に用いられてきた。
塞ぎ方の手順
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釘などで専用の工具を作成して使用する。
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管頭の内側に貼り付ける
吹き口の内側上部に蜜蝋を置いて軽く押し当て、塞ぐ量を調整する。 -
音を確認する
実際に吹いて音程をチェックし、蜜蝋の大きさや位置を少しずつ変えて調整する。 -
仕上げる
調律が決まったら、そのまま固定して使用する。
注意点
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夏場など高温で柔らかくなりすぎると形が崩れることがあるため、保管場所に注意。
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最終的な調律は「穴の大きさ」とのバランスで決まるため、蜜蝋はあくまで補助的手段として用いる。
篠笛の調律
管頭を塞いで、調律をする。
音の調整
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試し吹き
各穴から出る音を確認し、音階が正しく出るかチェック。 -
内径・穴径の修正
音が高すぎれば内径を広げ、低ければ穴を微調整します。
篠笛の管内を漆塗りをする。
管内を漆塗りする。
篠笛の表面仕上げ
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磨き・塗り
表面を磨き、必要に応じて漆や油で仕上げをします。 -
割れ止め加工
糸巻きや籐巻きを施すことで耐久性を高めます。
篠笛の籐を巻いて装飾する
籐などを巻いて装飾をする。
篠笛の完成と調律
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最終確認
音階を通して吹き、音のバランスを整えます。 -
装飾仕上げ
伝統的な装飾や模様を加えると、見た目も美しく仕上がります。
まとめ
篠笛づくりは「素材選び」「穴の設計」「音の調整」が要となります。一本一本に個性があり、手作業ならではの魅力が込められるのが醍醐味です。
頑張って、作ってみましょう。





